DV(Domestic Violence ドメスティック・バイオレンス)という言葉を聞いたことがありますか?
最近は多少認知度が増してきた気がしますが、まだまだ「うちとは関係ない」「大げさな」と思っている人も多くいるのではないでしょうか。
実際、令和4年度、内閣府がDV相談件数について調べたところ、122,212件にのぼりました。(内閣府 男女共同参画局)
「うちとは関係ない」ではなく、身近な問題です。
今回は、DVについて描かれた絵本をご紹介。
ご自身がDVに悩んでいる場合、また大切な人がDVを受けているかもしれないと思っている場合、また子どもにDVというものを知ってほしいという場合など、ぜひ手に取っていただきたい絵本です。
DVって、絵本で扱われることもあるんですか?子ども向けにどうやって伝えるんだろう…。
子どもにも理解できるよう、DVを「怒り鬼」という怪物として表現した絵本があるんじゃ。直接的な暴力描写を避けながら、DVの問題を伝える工夫がされておるよ。
絵本「パパと怒り鬼」
今回ご紹介するDVについての絵本が「パパと怒り鬼」です。
ノルウェーで出版された絵本で、2011年に日本語に翻訳されています。(出版社:ひさかたチャイルド)
「パパと怒り鬼」は、パパがなぜ怒り鬼になるかを息子の目線から描いた絵本で、DVを「怒り鬼」という怪物として表現することで、直接的な描写を避けながら、DVの問題を扱っています。
パパの怒り鬼が暴力を振るう場面や、息子の恐怖心や悲しみが描かれていますが、最終的には息子がパパと一緒に怒り鬼と向き合い、克服していく姿が描かれています。
この絵本は、DVについての理解や共感を促し、支援や解決に向けた意識を高めることを目的としています。また、DVを体験した子どもたちが、自分の経験を理解し、受け入れるためのサポートにもなっています。
「パパと怒り鬼」の内容
実際の内容を紹介します。
この絵本は、DVを「怒り鬼」という怪物として表現することで、子どもたちが理解しやすい形でDVの問題を描いています。主人公の息子は、パパが酔っ払いになると怒り鬼が出てきてDVが起こることを知っています。
絵本の主人公は、パパが怒り鬼に変身する前に、自分とママを守るために逃げたり、パパをなだめたりしようとします。しかし、パパが怒り鬼になると止めることができず、家族は恐怖にさらされます。
最終的には、息子がパパに怒り鬼を退治するための助けを求め、パパが専門家に相談することを決意します。絵本は、DVの問題を正面から描きながら、支援を求めることが解決の第一歩であることを伝えています。
パパが「怒り鬼」になる原因
「パパと怒り鬼」では、パパが「怒り鬼」になる原因として、アルコールや薬物などの依存症が描かれています。
現実のDVにおいても、加害者が怒りを制御できない場合、アルコールや薬物の影響を受けていることがあります。ストレスや心理的問題などに加え、これらの依存症もDVの原因の一つとなっています。
ただし、DVの原因はアルコールや薬物だけに限らず、様々な要因が絡み合っています。
加害者が更生するためには、依存症の治療のみならず、怒りの制御やコミュニケーションスキルの向上、心理的なトラウマの解消など、多角的なアプローチが必要です。
DVの被害者への支援と同時に、加害者への支援も重要であることがわかります。
DVの原因がアルコールだけじゃないって知らなかったです…。加害者にも支援が必要なんですね。
そうじゃな。DV行為の責任はもちろん加害者にある。でも、依存症やトラウマなど様々な問題を抱えていることが多く、だからこそ適切な支援が変化につながることがあるんじゃよ。
「怒り鬼」の描写から学ぶ
「パパと怒り鬼」では、DVを「怒り鬼」という怪物として表現することで、子どもたちが直接的な暴力描写に触れずに、DVの問題を理解できるようになっています。
この「怒り鬼」のメタファーから、いくつかのことを学ぶことができます。
まず、怒りは怪物のように扱いにくいものであり、制御するためには努力が必要だということです。怒り鬼は突然現れ、暴力を振るった後、消えてしまいます。しかし、その後も家族には恐怖と傷が残ります。
次に、怒り鬼を退治するためには、一人では難しく、専門家や支援者の助けが必要だということです。息子が助けを求めてパパを変えるきっかけを作ったように、被害者や家族が支援を求めることが、DVの問題解決に繋がります。
最後に、怒り鬼はパパ自身ではなく、パパの中にある問題の一部であるということです。DV行為の責任は加害者にある一方で、依存症やトラウマなど様々な問題を抱えているケースが多く、適切な支援が更生につながることがあります。だからこそ、被害者支援と並行した加害者プログラムの重要性が、社会福祉の現場でも広く認識されています。
「パパと怒り鬼」のメタファーを通じて、DVについての理解を深め、支援や解決に向けた行動を促すことができるでしょう。
絵本から学ぶDVとの向き合い方
「パパと怒り鬼」では、息子がDVの問題を理解し、解決に向けた行動を取ることが描かれています。
まず、息子はDVを「怒り鬼」として認識することで、DVを個人の問題ではなく、制御が難しい怒りの問題として理解します。
次に、息子はDVが自分や家族に悪影響を与えていることを認識し、問題解決のために行動を起こします。
息子はパパに怒り鬼を退治する方法を教えてもらい、パパが専門家に相談することを決意します。これにより、DVの問題に対して積極的に取り組む姿勢が示されています。
最後に、息子とパパが一緒に怒り鬼と向き合い、克服していく姿が描かれています。DVの問題を家族で共有し、協力して解決に向けて取り組む姿勢が示されています。
「パパと怒り鬼」から学べるDVとの向き合い方は、DVを個人の問題ではなく、家族全体で向き合うべき問題として認識することや、専門家のサポートを借りることの大切さです。また、DVを「怒り鬼」として表現することで、怒りの問題を直視し、解決に向けた行動を起こすことが重要であることを学ぶことができます。
一人で抱え込まずに専門家に相談することが大切なんですね。勇気がいることだけど…。
そうじゃな。勇気を出して助けを求めることが、問題解決への第一歩じゃよ。DVは個人の力だけで解決しようとせず、専門家や支援機関を頼ることが大切じゃ。
まとめ
この絵本、「パパと怒り鬼」ですが、DVを怒り鬼という怪物として表現することで、子どもたちが理解しやすい形でDVの問題を描いています。
主人公の息子がDVに立ち向かい、パパを変えるきっかけを作ることで、DVの問題に対して積極的に取り組む姿勢を見せていました。
子どもたちに対してDVについての理解を深めるとともに、家族全体でDVに向き合い、解決に取り組む重要性を伝えてくれます。
また、専門家の支援を受けることの重要性も描かれており、DVの被害者だけでなく、加害者への支援プログラムも再発防止に寄与することが示されています。
もちろん、この絵本を読むだけでは、DVという世界的に深刻な問題の完全な理解はできないと思います。でも、DVについてあまり知らない人に対してはこういった問題があるよという問題提起に、DVの被害者に対しては勇気を出して助けを求めてほしいというメッセージになると思います。
少なくとも私は、冗談でも「DV受けた~」なんて笑いながら言ってはいけないことなんだなと、認識することができました。
また、大人だけでなく、子どもに読み聞かせをしてあげると、こんな問題があるよという理解の助けになるかと思います。ただ、絵が少し怖いところがあるため、怖がらせてしまうかもしれませんが…
もし今、困っている方へ
DVや暴力に悩んでいる方は、一人で抱え込まず、専門機関に相談してください。
- 配偶者暴力相談支援センター(各都道府県)
- DVホットライン:0120-279-889(DV防止法に基づく相談窓口・無料)
- 警察相談専用電話:#9110