同じミスをしても、やたらと怒られる人と、不思議なほど怒られない人がいます。その差は一体どこにあるのでしょうか?
ちょっとした思考実験をしてみてください。あなたが心から信頼しているAさんと、正直あまり信頼できないBさんが、同じタイミングで同じミスをしたとします。あなたはどちらに厳しく怒るでしょうか?
おそらく多くの人が、Bさんには口調が強くなり、Aさんには「珍しいね、大丈夫?」と声をかけるはずです。つまり、怒られやすさは「何をしたか」よりも「誰がしたか」に大きく左右されるのです。
そのカギを握るのが、今回のテーマ 「信頼残高」 です。
信頼残高とは、人と人との間に積み重なる信頼の量を銀行口座の預金に例えた考え方。残高が多い人はミスをしても怒られにくく、少ない人は小さなミスでも強く怒られやすい。
この記事では、信頼残高という考え方をベースに、怒られやすい人の特徴・怒られにくい人の特徴、そして今日から残高を増やしていく具体的な方法を解説していきます。
信頼残高とは?『7つの習慣』で有名な考え方
信頼残高(Emotional Bank Account)は、スティーブン・R・コヴィー氏の名著『7つの習慣』に登場する言葉です。
銀行の預金と同じで、約束を守る・誠実に対応する・相手を気遣うといった行動で残高は増え、約束を破る・嘘をつく・言い訳をするといった行動で残高は減っていきます。
つまり、ミスしても怒られにくい人は、日頃から信頼の貯金をしてるってこと?
その通りじゃ。普段コツコツ貯めておけば、いざという時に少し引き出しても口座はまだプラスのままじゃろ? 逆に残高ゼロの人がミスをすれば、たちまち赤字になって、まわりの堪忍袋も切れてしまうわけじゃな。
怒られにくい人になりたいなら、ミスをしないことよりも普段から残高を増やしておくことのほうがずっと現実的で効果的なのです。
怒られやすい人の特徴7つ(信頼残高が減る行動)
まずは、知らず知らずのうちに残高を減らしてしまっている行動をチェックしていきましょう。当てはまるものが多いほど、口座は危険な状態かもしれません。
1. 言うことを聞かない
指示されたことを守らず、勝手に違うやり方で進めてしまう人。本人は「こっちのほうが効率的」と思っているかもしれませんが、指示した側からすれば「なぜ聞いてくれないのか」と信頼を大きく損ないます。
2. 言い訳をする
ミスをしたときに、まず謝るのではなく理由を並べ始める人は要注意です。
私自身、若い頃に海外出張の報告書を期限までに出せなかったことがあります。そのとき上司に「現地の方にお酒をたくさん飲まされて……」と言い訳してしまい、かえって怒りに火を注いでしまった苦い経験があります。素直に「すみません、今日中に出します」と言えばよかったのです。
言い訳は残高を引き出すだけでなく、マイナスの利息までつけてしまう最悪の行動と言えるでしょう。
3. 話の途中で割り込んで自分の主張をする
特に怒られている最中に「いや」「でも」と被せてくる人は、相手を一気に不愉快にさせます。言いたいことがあっても、まずは最後まで聞く姿勢が大切です。
4. 同じことを何度も質問する
目安として 2回まではセーフ、3回目からは要注意 と覚えておきましょう。3回目以降はメモを取る、スマホに記録するなど、同じ質問を繰り返さない工夫をするのがおすすめです。
5. 自分のミスを他人のせいにする
「Aさんがちゃんと伝えてくれなかったから」「システムが悪いから」と責任転嫁する人は、一気に残高を失います。ただし、新入社員や入りたてのメンバーは「先輩の指示が曖昧だった」というケースも多いので、この限りではありません。
6. ルールや約束を守らない
遅刻、締切破り、社内ルール違反。小さくても積み重なると信頼は確実に削られていきます。
7. 怒られているときに笑っている
緊張するとつい笑ってしまう人もいますが、怒っている側からすれば「バカにされている」と感じてしまいます。以前の職場で、ニコニコしたまま注意を受けていた若手が「笑うな!」とさらに強く叱られる場面を見たことがあります。本人に悪気はなかったのですが、誤解を招いてしまったのです。
(番外編)日頃から行動や身だしなみに気をつけていない
服装が乱れている、机が散らかっている、挨拶をしない。こうした日常のディテールも、実は信頼残高にじわじわ効いてきます。
なお、「怒られ方」を受ける側としてだけでなく、怒る側として知っておきたい人には、好かれる叱り方についての記事もあわせて読むと理解が深まるでしょう。
怒られにくい人の特徴3つ(信頼残高が増える行動)
次は、残高をグングン増やしている人の特徴です。
えー、全部できなきゃダメなの? ハードル高そう……
安心するのじゃ。いきなり全部やる必要はないぞい。まずは1つだけ、自分にできそうなものから始めれば十分じゃ。
1. コミュニケーション能力が高い
「可愛がられている人」と言い換えてもいいかもしれません。報告・連絡・相談がまめで、相手の話にしっかりリアクションを返す。この積み重ねが信頼残高を増やしていきます。
具体的に今日から始められる方法は次の3つです。
- 挨拶を自分から:毎朝「おはようございます」を自分から一声かける
- リアクションを大きめに:相手の話に「なるほど」「そうなんですね」と合いの手を入れる
- 感謝をすぐ言葉に:「ありがとうございます」を1日1回以上、意識的に口にする
難しいテクニックは不要です。小さな積み重ねが、大きな残高になっていきます。
2. 色々なことに気がつける
いわゆる「気が利く人」です。会議で資料が足りない人にサッと渡す、飲み会で空いたグラスに気づく、誰かが重そうな荷物を持っていたら声をかける。
気配りは才能ではなく 観察の習慣 です。練習の場としておすすめなのは、食事会や飲み会。「誰のグラスが空いているか」「取り皿は足りているか」を意識してみると、自然に視野が広がっていきます。
3. 堂々としている
自分の意見をハッキリ言える人、背筋を伸ばして話せる人は、それだけで信頼されやすくなります。逆にオドオドしていると「この人、大丈夫かな?」と思われてしまうのです。
でも、自信なんてどうやって持てばいいの? 急には無理だよ……
いきなり大きな自信は要らんのじゃ。まずは 小さな約束を自分自身と結んで守る ことから始めるとよいぞ。「明日は10分早く家を出る」「今日は机の上を片付けてから帰る」——そんなささやかなことでいい。自分との約束を守れた実績が積み重なると、不思議と背筋が伸びてくるものじゃ。
自信とは、他人から与えられるものではなく、自分との約束を守った積み重ねで少しずつ育っていくものなのです。
もし今まさに怒られて落ち込んでいるなら、怒られて人生が嫌になったときに思い出したい7つの魔法の言葉も心を軽くしてくれるはずです。
まとめ:どれから始める? 優先順位はこの順番で
怒られやすい人と怒られにくい人の差は、才能ではなく「信頼残高」という毎日の積み重ねの差です。
とはいえ、一度に全部を変えるのは大変です。もし何から始めればよいか迷ったら、次の順番で取り組んでみてください。
- まずはバケツの穴をふさぐ:言い訳・責任転嫁・約束破りをやめる(残高の流出を止める)
- 次に小さな入金を始める:自分からの挨拶・感謝の一言・自分との小さな約束を守る
- 最後にプラスアルファ:気配り・堂々とした姿勢を意識する
穴の空いたバケツに水を注いでも溜まりません。まずは穴をふさぐことが先決です。
なお、「なぜ自分ばかり怒られるんだ」と感じている方は、原因他人論と原因自分論の記事も参考になります。原因を自分に向ける習慣そのものが、信頼残高を増やす土台になっていくはずです。
博士、なんだか前向きになれたよ! まずは明日、自分から挨拶するところから始めてみる!
それでよいのじゃ。信頼残高は一日では貯まらぬが、一日でゼロにもならぬ。コツコツが一番の近道じゃよ。
……ちなみに、最後にひとつだけ豆知識を。実は 信頼残高がマイナスを通り越して、もはや「コイツに言ってもムダだ」と諦められている人 は、怒られることすらなくなります。ただしその場合、怒られない代わりに、人が静かに離れていくという別の問題が待っています。
怒られるうちが花、とはよく言ったもの。せっかく注意してくれる人がいるなら、それは残高を増やすチャンスだと前向きに受け取って、今日からコツコツ貯金を始めてみてはいかがでしょうか。