人間関係を築く上で、時には相手に指摘したり、非難したりすることが必要になることがあります。
よく「改善するように怒ってやる」とか「今日、怒られちゃったよ」というように、「怒る」という言葉が使われがちですが、この「怒る」を分解すると、実際は「怒る」、「叱る」、「注意する」、「説教する」に分けることができます。
では、あなたはこの「怒る」、「叱る」、「注意する」、「説教する」の違いを説明できますか?
これらの言葉は、方向性としてはどれも相手に何かを伝えたいときに用いる言葉ですが、そのニュアンスは異なります。
この記事では、それぞれの言葉の意味や目的、また、それぞれに生じる問題点、注意点を交えて、適切に使い分けられるように解説していきます。
子どもや部下がいるなど、指導していく立場の人は、是非参考にしてください。
「怒る」とは、相手に向かって感情的な反応を示すこと
「怒る」とは、自分が感じる不満や不適切な行動に対して、緊急で相手に向かって感情的な反応を示すことを指します。
例えば、子どもがとても危険なことをしようとしていた時や恋人から全く連絡が来ずにとても心配した時などですね。
「緊急で」というところがポイント
怒る際に起こりがちな問題点は、怒りの感情を制御できなくなってしまい、相手に対して過剰な反応を示してしまうこと。怒りの感情が制御できなくなると、怒る理由となった行動だけでなく、別のことを引き合いに出したり、言わなくてもよいことを言ってしまうことがあります。
また、怒りを感じているときには、相手にひどい言葉で攻撃したり、暴力を振るったりすることがあります。そのため、相手を萎縮させたり、傷つけたり、状況を悪化させてしまい、相手との心の距離を遠ざけてしまうことがあるので、注意が必要です。
あの人怖い…
となってしまう可能性があるということですね。
正直、相手に対してただ「怒る」つまり、感情だけをぶつけることは、メリットよりもデメリットの方が多いです。
上にも書きましたが、怒り方によっては人間関係が壊れかねないこともあるので、もし、あなたがよく怒ると自覚しているのであれば、まずは自分の感情を抑えて冷静になる練習をしましょう。
怒りの感情をコントロールする方法についてはこの記事に書いてあるので、参考にしてください。
冷静になることができたら、相手に対してどのような反応を示すべきか、その反応が相手にとってどのような影響を与えるのかを考えてみましょう。その上で、次の行動に移れると満点です。
でも、わたしたち、人間は不完全ですよね。冷静にならないといけないとわかっていても、ついついカッとなってしまうことだってありますよね。
それは仕方のないことなので、もしカッとなって怒ってしまったとしても、その後のフォローを必ずしてください。
相手の立場に立ち、相手がどのような状況にいるのか、相手がどのような思いを持っているのかを考えてフォローすることで、相手との関係を良好に保つことができます。
どうやってフォローすればいいかわからないときは、「さっきは言いすぎてごめん」と言うだけでも、その後の関係は全く違ってくるはずです。
「叱る」とは、不適切な言動を指摘して責任を問い反省を促すこと
「叱る」とは、相手の言動が不適切であった場合、そのことを指摘して、責任を問い反省を促すことを指します。
叱るような状況として、例えば、部下が業務でミスをしたときや、子どもが勉強を怠ったときなどが挙げられます。
その場の問題を解決することが目的じゃな
叱ることのメリットとしては、まず相手に対して問題点を明確にすることができるという点が挙げられます。
相手が何を間違えたのかを明確に伝えることで、相手はその問題点について自己反省することができ、同じ問題が繰り返されることを防ぐことができます。
さらに、叱ることで相手に対して、自分自身の責任や義務の意識付けをさせることができます。
相手が自分の行動について責任を持ち、改善しようと考えるのを促すことができるということですね。
ただし、叱る場合には注意点もあります。
それは、相手の性格によって、叱ることであなたが思っている以上に相手が傷ついたり、悲しんだりすることがあるのです。
あぁ、めっちゃ凹む…
そのため、叱る際は相手の性格や気持ちを十分に考慮し、相手に対して適切な言葉遣いをすることが重要になってきます。
なんでもかんでも問題点を伝えればいいってわけじゃないってことじゃな
また、よくあることなのですが、発生した問題の原因が自分にある場合もあります。
相手のミスだと思ったことが、あなたの説明不足によるものだとしたら、叱ることは逆効果になりかねません。
いや、そんな説明されてないし!!
ってことが往々にしてあります。(経験談)
したがって、問題が起こった場合、すぐに叱るのではなく、なぜそうなったのか相手に聞き取りを行うようにしましょう。
相手の立場や状況を考慮し、相手を必要以上に傷つけず、かつ効果的に指導できるようになれば、あなたは立派な指導者です。
「注意する」とは、言動が不適切と思われる場合に気づかせること
「注意する」とは、相手の言動が不適切と思われる場合に気づかせることを指します。
例えば、職場で軽率な発言をしている同僚に対してなど、子どもが道路で走り回っているのを見かけた場合や、危険が伴う行動や、人間関係においてトラブルが生じそうな状況で行います。
相手が問題を引き起こしそうな行動をとったりした際に、その行動を改めさせるのが目的じゃな
怒るの中でも「注意する」は比較的軽いため、怒り度合いは低いですが、不適切を気づかせて行動を改めさせるという目的があるため、相手に対して時には優しく、時にはキツく、さらに、どこが不適切でどうすべきかを明確に伝えることが重要です。相手が受け入れやすい言葉遣いやタイミングを見極めることも大切となってきます。
注意を受けた相手が自らの行動を改めつつ、その後も良好な関係を築くことを目指しましょう。
「叱る」と「注意する」の違いってなんだ?
簡単に言うと、
・「叱る」は厳しく責め立てること
・「注意する」は丁寧に指摘して改善を促すこと
です。
また、相手に対して、
・強い印象を与えて改善を促したい場合は「叱る」
・自分の言動を振り返って自発的に改善してもらいたい場合は「注意する」
となります。
「叱る」のは重要な問題に対して、「注意する」のは軽い問題に対して行われることが多いですね。
相手の感情に与える影響も違ってくるから、適切に使い分けよう
「説教する」とは、自分が正しいと思う考えや行動を教え説くこと
「説教する」とは、相手に対して、自分が正しいと思う道徳的な価値観や考え、行動を教え、説くことを指します。
説教する状況として、例えば、勉強を嫌がる子どもに対し、勉強するように説教することで、将来のために役立つ知識を身につけさせたり、部下が倫理的に問題である行動をとっている場合に、その指摘や改善を促すと言ったことが挙げられます。
相手が良くない行動をとったり、悪い考え方を持っている場合に、正しい方向に方向転換させることが目的じゃな
まずは、説教をする上での注意点をお伝えします。
それは、相手の人格を否定するような表現をしないことと、強制的に自分の意見を押し付けるような態度を取らないこと。
説教は、怒りという恐怖よりも、論理的に相手を変えることを目的として行われます。したがって、相手が望んでいる場合には有益なものになりますが、人格否定や強制的に押し付けるようなことをしてしまうと、聞く耳を持ってくれないだけでなく、最悪、人間関係が悪化します。
説教は字のごとく「教え説く」ため、相手に対して優しく、丁寧に話し掛けることが大切になってきます。そのためには、まず相手の立場や状況に対して理解を示し、相手が聞き入れられる土台を作ってあげましょう。
土台ができたら、具体的な行動や言動について指摘し、具体的な改善策を提案していくという流れになります。
ちなみに、説教は相手への信頼度が大きく影響します。
想像してもらえばわかりやすいと思いますが、あなたは嫌いな人と尊敬する人に全く同じことを説教されたとして、どちらの話を受け入れますか?
そりゃあ、尊敬する人でしょ
嫌いな人からの説教だと、正しいことだとわかっていても、心が受け入れられないなんてことが普通にあります。
相手を変えるということは本当に難しいことで、基本はできないと考えておいた方がいいですが、それをやってのけようというのであれば、普段から信頼を積み重ねておくことがとても重要になってきます。
信頼を積み重ねたことを信頼残高と呼んだりするのですが、信頼残高についてはこの記事に書きました。怒られる側目線ではありますが、参考にしてください。
まとめ
本記事では、「怒る」、「叱る」、「注意する」、「説教する」の違いについて解説しました。
もう一度、簡単に書いておくと、
「怒る」:自分が感じる不満や不適切な行動に対して、相手に向かって感情的な反応を示すこと
「叱る」:相手の行動や言動が不適切であった場合、そのことを指摘して、責任を問い反省を促すこと
「注意する」:相手の言動が不適切と思われる場合に気づかせること
「説教する」:相手に対して、自分が正しいと思う道徳的な価値観や考え、行動を教え、説くこと
です。
相手に与える恐怖は、「怒る」>「叱る」>「注意する」>「説教する」となります。
「怒る」は強く訴えかけることができますがデメリットも大きいため、ここぞというときだけにしておきましょう。ですので、通常は「叱る」、「注意する」、「説教する」を状況や立場に応じて上手に使い分けていくことになると思います。
あと、注意しなければいけないことは、最初は「叱る」や「注意する」つもりでも、段々と感情がエスカレートしてきて、「怒る」になってしまうことです。そんな風にならないように、自分の感情をコントロールしつつ、相手を理解・尊重し、焦点を人ではなく、物事に当てるようにすることが大事です。
年齢が上がれば、指導する機会も増えていくと思いますので、これらを上手に使い分けて、より良い人間関係を構築していきましょう。